32006 テーパーローラーベアリング：自動車、農業、産業機械向けの高複合荷重
I. 製品概要
32006 テーパーローラーベアリングは、複雑で過酷な作業条件下における中負荷機械の運用要求を満たすように設計された高精度機械部品です。テーパーローラーベアリングシリーズの主要メンバーとして、内径（d）30mm、外径（D）55mm、幅（B）17mmという特定の寸法パラメータを備えています。この寸法構成は、32004モデルと比較して耐荷重能力を向上させ、中～重ラジアル荷重の効果的な管理を必要とする用途に汎用性があり、適度なアキシアル力にも対応できますが、シャフトのミスアライメントに敏感であり、安定した機械操作を確保するために適切な取り付けが必要です。
II. 構造設計
2.1 転動体
32006 ベアリングには、32004モデルよりも大きなサイズの精密に製造されたテーパーローラーが装備されています。これらのローラーは、優れた硬度（HRC58-64）と優れた耐摩耗性で有名な高品質の高炭素クロム軸受鋼（GCr15）から作られています。製造プロセスは厳格な品質管理基準に準拠しており、各ローラーが滑らかな表面仕上げと正確な寸法精度（公差クラスは通常P0-P6）を備えていることを保証します。ローラーのテーパー形状は、軌道との最適な線接触を生み出し、円筒ローラーと比較して荷重分布面積を拡大します。この設計により、局所的な応力集中が軽減され、早期摩耗のリスクが最小限に抑えられ、中～重荷重条件下でのベアリングの耐用年数が延長されます。
2.2 軌道
32006 ベアリングの内輪と外輪の両方に、32004よりも大きなコーン角度を持つ、適合したテーパー軌道が採用されており、より高い荷重要求に対応します。軌道は、テーパーローラーとともに「コーンアセンブリ」構造を形成します。荷重が加わると、力がコーン母線に沿って方向付けられ、ラジアル荷重とアキシアル荷重の組み合わせを効率的に処理できます。軌道は、高度な熱処理プロセス（焼入れと焼き戻しを含む）を受け、HRC58-64の高い表面硬度と、1.5〜3mmの均一な焼入れ層深さを実現しています。これにより、耐摩耗性と耐疲労性が向上し、ベアリングは頻繁な荷重変動や過酷な動作環境（ほこり、振動、120℃までの適度な温度変化など）に耐えることができます。
2.3 ケージ
32006 ベアリングでは、高強度鋼ケージ（通常は08F鋼またはQ235鋼製）を使用して、テーパーローラーを分離し、ガイドします。ケージは、ローラーをしっかりと保持する均等に配置されたポケットで精密に機械加工されており、高速運転中の隣接するローラー間の衝突と摩擦を防ぎます。これにより、スムーズで安定した転がり運動が保証され、ベアリングの全体的な信頼性と効率が向上します。高度な設計では、ケージに耐摩耗性材料（亜鉛めっきやリン酸塩コーティングなど）がコーティングされているか、引張強度（≥450MPa）と耐食性を高めるために追加の熱処理が施されている場合があります。これにより、湿気の多い環境やわずかに腐食性の環境（屋外の畑で作業する農業機械など）に適しています。
III. 性能特性
3.1 ラジアルおよびアキシアル荷重の向上した負荷容量
32006 テーパーローラーベアリングは、ラジアル荷重とアキシアル荷重の組み合わせを処理するように特別に設計されており、32004モデルよりも高い定格荷重を備えています。その基本定格動荷重定格（Cr）は通常58〜65kN（メーカーによって異なります）であり、基本定格静荷重定格（C0r）は75〜85kNであり、中～重荷重用途に適しています。ベアリングのアキシアル荷重容量は、その接触角（通常10°〜15°）によって決定されます。接触角が大きいほど、より大きなアキシアル力に耐えることができます（ラジアル荷重の最大30％）。これにより、自動車のドライブアクスル、中型のギアボックス、農業用トラクターのトランスミッションなど、複雑な荷重条件の機械に最適です。
3.2 中速適応性
32006 ベアリングは中程度の速度で動作できますが、そのテーパーローラー設計（線接触）は、ボールベアリングよりも多くの摩擦を発生させ、高速性能を制限します。その基準速度（グリース潤滑下）は通常約4500〜5500 r/minであり、限界速度（油浴潤滑下）は最大6500〜7500 r/minに達します。これは、高速ボールベアリングよりも低いですが、中負荷用途（小型産業用モーター、コンベア駆動システムなど）には十分です。適切な潤滑は、摩擦と熱の蓄積を減らすために不可欠です。推奨速度範囲を超えると、温度上昇（90℃以上）と効率の低下につながる可能性があります。
3.3 ミスアライメントに対する感度
他のテーパーローラーベアリングと同様に、32006 はシャフトハウジングのミスアライメントに比較的敏感です。わずかなミスアライメント（0.5°を超える）でさえ、ローラーと軌道への不均一な負荷を引き起こし、局所的な摩耗、振動の増加、および寿命の短縮につながる可能性があります。これを軽減するには、ベアリングの正確な取り付けが必要です。シャフトとハウジングはレーザーアライメントツールを使用して位置合わせし、適切な圧入（内輪-シャフトの場合はH7/k6）とすきまばめ（外輪-ハウジングの場合はH7/js6）を維持する必要があります。軽微なミスアライメントが発生しやすい用途（建設機械など）では、セルフアライニングワッシャーなどの補助部品を使用して補正することができます。
IV. 適用分野
4.1 自動車産業
自動車分野では、32006 ベアリングは中型車のドライブアクスルとディファレンシャルシステムに広く使用されています。ドライブアクスルでは、加速とブレーキ中に発生するアキシアル力を処理しながら、車両の重量（ラジアル荷重）を支えます。ディファレンシャルでは、エンジンとホイール間のスムーズな動力伝達を促進し、旋回中の速度差に対応します。その負荷容量は、小型SUV、軽トラック、商用バンによく適合しており、中～重荷重の要件が小型の32004モデルの能力を超える場合に適しています。
4.2 産業機械
一般的な産業機器では、32006 ベアリングは、中型のギアボックス（コンベア用減速機、ミキサーギアボックスなど）および小型～中型の産業用モーター（5〜15kW）の主要コンポーネントです。ギアボックスでは、ギアのかみ合いからのラジアル力と、ギヤ歯のかみ合いからのアキシアルスラストに耐え、効率的な動力伝達を保証します。モーターでは、回転シャフトを支え、可変荷重条件下でも安定性を維持します。また、紡績機械（紡績フレームローラーなど）や印刷機械にも使用されており、中程度の速度と中程度の負荷の要求がその性能特性と一致しています。
4.3 農業および建設機械
32006 ベアリングは、過酷な環境で動作する農業および建設機械に適しています。農業用トラクター（50〜80馬力）では、フロントアクスルシステムに使用して重い負荷を支え、畑での旋回中のアキシアル力を処理します。小型建設機械（ミニショベル、スキッドステアローダーなど）では、ロータリージョイントまたは油圧ポンプシャフトに設置され、高衝撃荷重と振動に耐えます。その耐食性ケージ設計（防錆コーティングが施されている場合）は、泥だらけの畑やほこりの多い建設現場など、屋外の作業条件にも適応します。
V. 寸法と仕様パラメータ
| 寸法タイプ | 値 |
| 内径（d） | 30mm |
| 外径（D） | 55mm |
| 幅（B） | 17mm |
VI. メンテナンスポイント
6.1 潤滑管理
適切な潤滑は、32006 ベアリングの性能と寿命にとって不可欠です。一般的な用途には、高品質のリチウム系グリース（NLGI 2）を使用し、滴点≥180℃で、ベアリングの内部空間の1/3〜1/2を満たします。過潤滑は熱の蓄積を引き起こし、潤滑不足は乾式摩擦につながります。高温（120〜150℃）または重負荷環境では、合成グリース（ポリウレア系など）または油浴潤滑（ISO VG 46）に切り替えます。動作条件に基づいて潤滑間隔を設定します。通常の使用では3〜6か月ごと、ほこりや振動の多い環境では1〜2か月ごとです。
6.2 定期的な検査
摩耗や損傷の初期兆候を検出するために、定期的な検査を実施します。リング表面とローラーの亀裂、腐食、または異常な摩耗を目視で確認します。振動計を使用して振動レベルを監視します（通常範囲：≤2.8mm/s）。振動が4.5mm/sを超えた場合、またはベアリング温度が90℃を超えた場合（通常負荷下）、分解してミスアライメント、ローラーの損傷、または潤滑剤の劣化がないか検査します。主要な機器（自動車アクスルなど）については、超音波検査を組み合わせて、肉眼では見えない内部欠陥（軌道のピッティングなど）を検出します。
6.3 取り付け上の注意
取り付け中は、ほこりや破片がベアリングに入らないように、清潔な作業環境を確保してください。専門のツール（油圧プレス、ベアリングプーラーなど）を使用して、リングへのハンマー打ちや直接的な力を避けてください。これにより、軌道の変形を防ぎます。内輪はシャフトとの圧入（H7/k6）を行い、滑りを防ぎ、外輪はハウジングとのすきまばめ（H7/js6）を使用して、わずかなアキシアル調整を可能にします。ダイヤルインジケーターを使用して位置合わせを確認します。ラジアル振れは≤0.05mm、アキシアル振れは≤0.03mmです。
6.4 保管に関する考慮事項
使用しないときは、32006 ベアリングを清潔で乾燥した、換気の良い場所（温度5〜25℃、湿度≤60％）に保管してください。元の防錆パッケージに入れたままにするか、防錆紙で包んで腐食を防ぎます。平らな棚に水平に保管し、積み重ね（最大積み重ね高さ：3層）を避けて、ローラーと軌道への不均一な応力を防ぎます。保管中は6か月ごとに検査します。錆が発生した場合は、灯油で洗浄し、乾燥させ、再梱包する前に防錆油を再塗布します。
